FIREを目指す道のりで、誰もが一度はぶつかる疑問、それが「インデックス投資」と「高配当株ETF」のどちらを選ぶべきか、ですよね。巷では「複利効果が~」「配当再投資が~」といった解説が溢れていますが、今回はそれらを一歩踏み込んで、「人生の自由度」という視点から、この二つの選択肢を掘り下げてみたいと思います。
「配当金は麻薬」? 高配当ETFがもたらす”目先の快楽”と”見えない足かせ”
VYMやSPYDのような高配当株ETFは、定期的に配当金が入ってくるため、「資産が増えている」という実感を得やすく、精神的な安定剤になりやすい側面があります。まるで、毎月少しずつご褒美がもらえるような感覚。でも、僕も一時期、高配当株ETFに夢中になったことがありました。毎月口座に振り込まれる数千円、数万円の配当金を見るたびに、「よし、順調にFIREに近づいているぞ!」と高揚したものです。
しかし、この「目先の快楽」には、実は見えにくい「足かせ」が潜んでいる可能性があります。
配当金という名の「消費の誘惑」
定期的に入ってくる配当金は、確かに嬉しいものです。でも、僕の場合、その配当金が「今月はちょっと贅沢しちゃおうかな」という悪魔のささやきに変わることがありました。新しいゲームを買ったり、ちょっと高めのランチを食べたり。FIREを目指す上で最も大切な「入金力」が、配当金という形で生活費に溶けていくことで、かえってFIREまでの道のりが遠のく… そんな「配当金という名の麻薬」に陥ってしまう危険性があるのです。
「減配」という名のサプライズと失望
高配当株ETFは、企業からの配当によって成り立っています。経済状況が悪化したり、個別の企業業績が悪化したりすれば、「減配」のリスクは常に存在します。僕も一度、ポートフォリオの中心に据えていた高配当ETFが減配を発表した時は「このままでFIREできるのか…?」という不安が押し寄せたのを覚えています。実際は、通年で合算してみると必ずしも減配とは言えないケース多いですが、その都度振り回されてしまうのはやはり精神的に健全とはいえないですね。そもそも安定収益が目的だったはずですから。
インデックス投資は「未来の選択肢を増やす」
一方で、全世界株式やS&P500のようなインデックスファンドは、短期的な分配金はありません。最初はやはり、お金が増えてる実感がないなと感じていました。でも、諸先輩のブロガーやユーチューバーの言葉にハッとさせられました。「目の前の配当に囚われるな。インデックス投資は、未来の君に無限の可能性を与えるパスポートなんだ」的な。
「究極の自動運転」
インデックスファンドの多くは、分配金を自動的に再投資される仕組みになっています。これは、税金が課されることなく、純粋に資産が再投資され、雪だるま式に増えていくことを意味します。配当金を受け取って税金を支払い、残りを再投資する手間も省けます。まさに「究極の自動運転」で、貴重な時間と労力を「未来の自由」のために確保してくれています。日々の忙しさの中で、いちいち再投資の手続きをする手間がないのは、本当はありがたいことなんだと考えるべきです。結局のところ、ETF運用してたら、どの道配当で再投資しますし、その手間を自動でやってくれるんですから。
「売却の自由」と「人生の柔軟性」
インデックス投資で形成した資産は、必要な時に必要なだけ売却することができます。教育費が必要になった時、病気や介護でまとまったお金が必要になった時、あるいは「今すぐ仕事を辞めて世界一周したい!」と思った時に。
僕の友人は、インデックス投資で貯めた資産を元手に、会社を早期退職して、念願だった地方移住を実現しました。「いつでも動ける」という経済的な自由があるからこそ、人生の大きな決断ができたんだ、と彼は言っていました。僕も、この「売却の自由」こそが、定期的な配当収入に縛られず、真にあなたの人生の主導権を握ることを意味すると考えています。
これが、もし高配当株ETFの場合、配当収入を前提とした生活設計になっていると、いざという時に売却しづらいという心理的な制約が生まれる可能性があったんじゃないでしょうか。
自分のFIREは「何のために」? 目的から逆算する選択
結局のところ、インデックス投資と高配当株ETFのどちらを選ぶべきかは、「あなたが何のためにFIREしたいのか」という、目的によって大きく変わってきます。
「安定収入」が絶対条件のFIRE?
もし自分が「毎月〇万円の安定収入がなければ不安で眠れない」というタイプであれば、高配当株ETFは魅力的に映るかもしれません。実際、そう考えていた時期がありましたが、その「安定」だって減配リスクや消費の誘惑があったりと心配がゼロになるわけでは無いんですよね。
「究極の自由」を追求するFIRE?
一方で、「人生の選択肢を最大化したい」「本当にやりたいことが見つかった時に、経済的な理由で諦めたくない」というタイプであれば、インデックス投資の方が断然有利です。僕自身、高配当ETFの減配を経験し、インデックス投資をメインにと決意してからは、「目先の配当よりも、未来の選択肢を増やすことの方が重要だ」と考えるようになりました。目先の配当に惑わされず、資産を雪だるま式に増やし、必要な時に必要なだけ現金化できる「売却の自由」も含めて真のFIREの姿かもしれません。
結論:FIREは「設計図」で決まる
インデックス投資か高配当株ETFか。この選択は、単なる投資手法の選択ではなく、自分のFIREの「設計図」そのものです。
インデックス投資は、真っ白なキャンバスに「自由な未来」を描くための絵の具セット。どんな絵を描くかはあなた次第。
高配当株ETFは、すでに「絵の具の配置」がある程度決まっている塗り絵。手軽に始められるが、描ける絵は限定的。
就職氷河期世代の僕たちは、過去の経験から「安定」を求める傾向があるかもしれません。しかし、これからの時代は、「どれだけ多くの選択肢を持てるか」が、真の豊かさを決めるのではないでしょうか。
と、長々と理想論を語ってしまいましたが、インデックス投資信託をメインとして運用しているものの、ボーナスやある程度まとまったお金ができた時にVYMは時々買い足しています。お小遣い程度でも配当が入ってくるという事実が、資産形成のモチベーションになるからです。
でも、そんなスタンスで考えることができるのも、あくまでメインはインデックス投資を運用しているからです。もし高配当インデックス1本だったらこうもいかないでしょう。